アルソンは2003年に、弟のアルセルと一緒にHOJにやってきました。
彼ら兄弟は生まれつきほとんど目が見えませんでした。
日常生活はできますが、普通の学校では受け入れてもらえません。
HOJのそばにある村で一番大きな学校なら、視覚障碍者向けのコースがあるのですが、
アルソンたちが住んでいる山の上から毎日2時間かけて通うのはかなり難しいです。
そこで、HOJに住んで、そこから学校に通うことになったのです。
また、医者に診せたところ、この視覚障害は進行性のもので、近いうちに完全に失明するだろうと言われました。
せめて視力のあるうちに、いろいろな体験をさせて可能性を伸ばしてやりたい。
そんな想いで、スタッフたちはアルソンを引き受けました。
HOJにやってきたアルソンはすぐに音楽に興味を持ち始めました。
スティービー・ワンダーやレイ・チャールズ、ラウル・ミドンのようなミュージシャンにあこがれて、
キーボードやギターを練習し始めます。学校でも歌のコンテストなどに出て活躍するようになりました。
もうひとつ、アルソンが興味を示したのが筋肉トレーニングです。
毎日率先して薪割りをし、腹筋や腕立て伏せを欠かさないアルソンは、
ティーンエイジャーになった頃にはものすごい肉体美になっていました。
HOJの他の子たちも、アルソンを当然のように仲間に入れていました。
みんなでサッカーをしよう!と言う時にもアルソンをチームに入れて、
「アルソンがゴールを決めたら3点ね!」などと特別ルールを作り、一緒に楽しんでいました。
ひょうきんな性格で、ボソっと面白いことを言うアルソンはパーティーの席の人気者でした。
自分で作ったジョーク満載のコミックソングを歌うと、みんな大爆笑でした。
そんなアルソンも学校に通い続けた結果、中学校の卒業資格を得て、
視覚障碍者のためのマッサージ師養成講座に通い、そこでも優秀な成績を認められ、
ダバオのマッサージ店で働くことになりました。
アルソンの筋力は「力強いマッサージ」を求めるお客さんたちに大人気らしく、
今では常連のお客さんが何人もいるそうです。
実家に久々に戻って来たときにも筋力トレーニングは欠かしません。
それにしてもこの写真、いろんな意味ですごいですよね。
前に会ったときには「最近彼女ができたんだ。彼女は目が見えるから、一緒に色んなところに行けて楽しいよ」
なんて言っていました。今後、素敵な展開がないか楽しみです!