ミッチーの物語

ミッチーは2004年の8月にHOJに来ました。

お父さんが酒を飲んでお母さんに暴力をふるうようになり、お母さんが家出。
そしてお父さんもほどなくして愛人を作って出て行ってしまいました。
家には11歳の長女クリスティーナ、10歳の次女アンギン、9歳の長男ウィリアム、7歳の三女ミナラ、
6歳のミッチー、4歳のマディー、そして1歳のインダイが残されました。
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母方の親戚は遠く、また、貧しくて支援してくれそうもありません。
父方の親戚では父親がほぼ勘当状態で「あいつの不始末なんか知るか!」と取り付く島もありません。
生きるためにクリスティーナは朝の3時から市場で働き、野菜を町で売り歩いてお駄賃をもらい、
また、売れ残りの野菜を安く分けてもらってなんとか暮らしていました。
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半年以上たってからようやく福祉局に通報が入り、ミッチーたち7人兄弟は保護されました。
薪を買うお金もなく、戸板をはがして薪にして暮らしていたため、家は穴だらけでした。

HOJにやってきて、ミッチーたちはすぐに学校に通うようになりました。
算数が得意で、学校の成績はいつも優秀、先生たちにも一目置かれる存在となりました。
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しかし、学校は楽しいことばかりではありませんでした。
親がいないことや、先天的に障害のある指のことを囃し立てられ、
何度も学校に行くのをやめようと思ったそうです。それでも信念を持って学校に行き続けたのは、
「自分を救ってくれた新しいお父さんとお母さんを悲しませちゃいけない」との思いからでした。
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囃し立ててくるようなクラスメイトは相手にせず、ミッチーは勉強と学校の行事に力を注ぎました。
そんなミッチーにはどんどん友達が、仲間が増えていき、
とうとう誰もミッチーを馬鹿にするような子は1人もいなくなりました。
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歌にもダンスにも楽器にもスポーツにも積極的に興味を示し、持ち前の負けず嫌いで
なんでもすぐに習得するミッチーは、HOJの看板娘のような存在になっていきます。
この10年間にHOJに来た人の中で、ミッチーを覚えていない人はいないでしょう。
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ここ2年ほどは学校の行事や活動で中心的な役割を担うことが多くなり、
土日にHOJで活動するときに参加できないことが多かったんですが、
竹音楽隊では華麗なダンスも披露してくれました。
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そしてついに高校を卒業!先生たち、クラスメイトたちに祝福され、ミッチーの努力が報われた瞬間でした。
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ミッチーには夢があります。
それは、ソーシャルワーカーになって、幼いころの自分のように苦しんでいるこどもを助けることです。
できれば卒業後はHOJで働いて恩返しがしたい、とも言っています。

ミッチーの努力を知っている多くの日本の人たちが支援を約束してくれて、
夢をかなえるべく、6月からはダバオの大学の福祉学科で勉強することになりました。
その準備も兼ねて、現在はダバオの地域の福祉局で、研修がてらアルバイトをさせてもらっています。
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ミッチーの挑戦はまだまだ続きます。HOJは「卒業」しましたが、これからも見守り続けたいと思います。